
2025年10月4日から神奈川県の最低賃金は、時給1,225円に引き上げられます。これは、現行の1,162円から63円の大幅増額(5.42%増)で、過去最大級の引き上げ幅です。
最低賃金の改定についてよく知り、会社として下記のような準備を進めていくことをおすすめします。
神奈川県の最低賃金は、時給1,225円に
神奈川県の新最低賃金は、時給1,225円(63円増、5.42%増)となり、全国で2位の水準になります。
東京都の1,226円ともわずか1円差となっており、首都圏最高水準です。全国加重平均1,121円を104円上回り、隣接県との格差も拡大しています。
都道府県 | 新最低賃金(神奈川県との差) |
---|---|
東京都 | 1,226円 (+1円) |
神奈川県 | 1,225円 |
埼玉県 | 1,141円 (-84円) |
千葉県 | 1,140円 (-85円) |
最低賃金改定による人件費の影響
フルタイム労働者(1日8時間 × 月20日勤務=月160時間)の場合、
時給が63円増額すると、
- 月の給与差:63円 × 160時間 = 10,080円
- 年間の給与差:10,080円 × 12か月 = 120,960円
もし従業員が10人いれば、
120,960円 × 10人 = 約121万円 の人件費増額になります。
わずか「時給63円」の引き上げでも、会社の人件費計画に大きな影響を与えるでしょう。
会社が準備すべき項目(9月末まで)
神奈川県では10月4日以降に行われる労働には新最低賃金が適用されます。
- 賃金計算の全面見直し
- 給与システムの給与計算処理の検証
- 給与システムの残業代計算の基礎賃金の更新
- 労働条件の見直し
- 既存契約の新賃金適用への変更、自動更新の確認
賃金計算の全面見直し
時給制の従業員だけでなく、月給制の従業員についても「月額給与(基本給)÷月平均労働時間≧1,225円」の確認が必要となります。特に短時間労働者の賃金設定の再確認はご注意ください。
給与システムの更新準備
10月4日からの適用設定と給与計算処理の検証、残業代計算の基礎賃金更新が必要です。
労働条件通知書の見直し
既存契約の新賃金適用への変更が必要となります。
従業員が社会保険の壁を気にする可能性も

最低賃金上昇により、これまで社会保険の適用外だったアルバイトやパートなどの短時間の従業員が社会保険の壁を気にするケースが出てくる可能性があるでしょう。
社会保険の被保険者の場合、諸手当や時間外残業手当の増加によって、標準報酬月額の見直しについても注意を払う必要があります。固定的賃金の変更により3か月平均の報酬月額がもし2等級以上変動した場合、随時改定の手続きが必要となります。
既存社員との賃金格差縮小への対処
最低賃金労働者の賃金上昇により、既存社員との賃金格差が小さくなる場合があります。既存社員のモチベーション維持のため、対策を検討することをおすすめします。
既存社員のモチベーション維持の対策例
- 能力給・職務給の見直し
- 金銭以外の待遇の充実
- キャリア開発制度の強化
段階的賃金調整により、最低賃金対象者以外の賃金も適切に引き上げることで、社内の賃金バランスを保持することも大切となります。
早期対応が会社のリスク予防につながる

神奈川県の2025年最低賃金改定は企業の労務管理に大きな影響を与える重要な制度変更といえます。
考え方によっては、従業員への適切な対応により、会社の信頼性向上と優秀な人材の確保にもつながる可能性もあるでしょう。
最低賃金改定でご不安な方はお気軽に魁マネジメントパートナー社労士事務所へご相談ください。
著者プロフィール

代表/特定社会保険労務士
岡村 俊彦
大手メーカーでのマネジメント経験後、社会保険労務士として独立。特定社会保険労務士・CFPとしての専門性を活かし、中小企業の労務トラブル解決や人材活性化を支援。ISO審査員補やYouTube出演の実績を持ち、年金・労務手続きから就業規則の策定、組織づくりまで幅広くサポート。
【保有資格】
・特定社会保険労務士
・ファイナンシャルプランナー CFP(R)
・プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー(R)
・医療労務コンサルタント(R)
・ISMS(ISO/IEC 27001) 審査員補
・OHSMS(ISO 45001:2018) 審査員補