「テンプレート就業規則」を使用することで発生するリスク
就業規則は、企業秩序維持のために統一的に明文化したルールともいえ、自社の実態に合っている就業規則が望まれます。
したがって、自社の実態に合っていない就業規則では、就業規則としての本来の役目を果たせなくなります。
たとえば、
- 知り合いの会社の就業規則を流用して作成
- 厚生労働省のモデルの就業規則をそのままコピーして作成
- ネットで見つけた就業規則をコピーして作成
などですね。
このように「テンプレート就業規則」を使用することで、それぞれの場合どのようなリスクが起こるのでしょうか?
1. 知り合いの会社の修業規則を流用して作成の場合
知り合いの会社が同じ業種であっても、自社の従業員種類、勤務形態、賃金体系が少しでも異なれば、会社に最適な就業規則といえないことがある。
2. 厚生労働省のモデルの就業規則をそのままコピーして作成の場合
標準的なモデルなので、そのままコピーでは会社の勤務体系等にマッチした就業規則といえないところが出てくる。
3. ネットで見つけた就業規則をコピーして作成の場合:
労働基準法をはじめ関連法令が毎年のように度々改正されることが多いため、ネット上の情報は常に最新ならばよいのですが、そうとは限らない場合、法令改正前の就業規則のこともある。
また、下記の点も注意することをおすすめします。
- 就業規則の作成で他の会社のものやモデルのもの流用する場合であっても、自社の実態に合わせて作り変える。
- 最新の法律改正等も含め調べ、その改正情報を盛り込む。
- 経営者の考え方も含め会社の方針や社員の働きやすいルールも盛り込む。
自分で就業規則を作成する際の注意点
経営者ご自身で就業規則を作成する場合、「テンプレート就業規則」をそのまま使用するのではなく、厚生労働省のモデル就業規則を参考例に自社の内容や実態を追加する方法がよいと思います。
厚生労働省のサイトに「モデル就業規則について」があり、ダウンロードして活用できます。
厚生労働省
モデル就業規則について
常時10人以上の従業員を使用する使用者は、労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督 署長に届け出なければならないとされています。就業規則を変更する場合も同様に、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。
次に掲載しております「モデル就業規則」の規程例や解説を参考に、各事業場の実情に応じた就業規則を作成・届出してください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/
この「モデル就業規則」において、会社の実態に合わせ作成してください。少々気になる点もありますので、さらに下記項目の5つの参考例等も合わせてご検討ください。
1. 適用範囲(第2条)について
「パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定める・・・。」とした場合、そのパートタイム労働者の就業規則の規定例等の案内も厚生労働省のサイトに記載されているので、参考にして必ず作成してください。
この場合、正社員やパートタイム社員という名称については、それぞれの定義を記載することをおすすめします。下記が参考例です。
【参考例】
(1)社員とは、会社と雇用契約を締結した者のうち、雇用期間の定めのない者。
(2)本就業規則は、特に定めの無い限り、社員についてのみ適用する。雇用期間の定めのある契約社員およびパートタイマー(週の所定労働時間が社員より短い者)については別途規則を定める。
2. 試用期間(第6条)について
「2 ・・、試用期間を短縮し、又は設けないことがある。」とありますが、延長が必要な場合もあります。就業規則に定めがないと延長ができないこともあるので、試用期間の延長ができるように下記の参考例のように記載をおすすめします。
【参考例】
・会社は、試用期間満了までに試用期間中の社員の適性等を考慮した上で、通算6か月間まで試用期間を延長することができる。
3. 個人情報保護(第16条)について
最近はSNSで話題になることも多いです。このSNSを含むインターネット上の情報発信についても定めることをおすすめします。
【参考例】
・社員は、業務遂行上で知った情報及び会社の信用を損なうような情報を、個人で利用するSNS (FB、ツイッター等)、電子掲示板、ブログなどインターネット上のサービスにて発信等をしてはならない。
4. 遅刻、早退、欠勤等(第18条)について
社員から、たとえ事前に会社へ連絡が行われたとしても「遊びに行くので休みます」では、会社の規律は守れなくなってしまいます。そのようなことがないように、下記の参考例の記載をおすすめします。
【参考例】
・事前の届出や会社に連絡があっての欠勤であっても、正当な理由が認められないものについては無許可欠勤とする。
5. 休日(第20条)について
業務の都合で法定休日に社員に働いてもらう場合は、あらかじめ法定休日以外の日と振替をおこなう、またはあらかじめ事前に設定できない場合は代休という処理を行うことがあります。この代休も規定が必要になりますので代休の記載をおすすめします。
【参考例】
・会社は、従業員を休日に出勤させた時は、代休を与えることができる。
いかがでしたでしょうか。
ご自身で就業規則を作成される際には以上の事を踏まえながら作成してみてください。
後々トラブルが発生した際に会社や従業員を守るためにも、テンプレート就業規則をそのまま使用せず、会社に合った内容にすることをおすすめします。